ノスタルジア
澪との不思議な生活が始まってから何日か経って、気付いたことがある。
「澪、今日は天気がいいね」
「そうだね、どいてキキ。テレビが見えない」
「外では桜が咲いてるのかな」
「もう散ったよ、きっと。だからどいて」
「…………」
相変わらず朝起きるのが遅い彼。
今日もお昼過ぎに起きてきて、今は朝ご飯なのか昼ご飯なのかよく分からない時間帯というのに、パンをちぎって食事をとっている。
テーブルの上には、ほんわり湯気のあがった入れたてのコーヒー。
大して見入ってもないくせして、お昼のバラエティーが入り始めたテレビの前に立って話しかける私を邪魔にする。
見たくもないテレビを彼が見てる理由は。
私の話をはぐらかすため。