最後に、恋人。
お風呂の時間までまだかなりある。
由紀と2人で温泉街を散策する事にした。
由紀の歩く速度が、先週より格段に遅くなっている。
「・・・・ごめん。 先行って」
由紀の速度に合わせてゆっくり歩いていたつもりだったのに、それでも由紀にとっては早かったらしい。
「・・・・・オレ、足長すぎるんだよな。 どうしても他人より早く歩けちゃうんだなー」
「・・・・・ほう」
由紀に気を遣わせまいとボケてみただけなのに、由紀に半笑いされながら足の長さを目分量で測られた。
「・・・・・・ホントに、誰よりも長いね。 ぶっちぎってるね。 他を寄せ付けないね」
由紀が意地悪に笑った。
由紀にはまだ、嫌味を言う元気はあるらしい。
「つー事で、この足長おじさんにまたおぶられなさいな」
由紀の前でしゃがんで見せる。
きっと由紀は疲れてる。
ちょっとでも由紀が楽になるなら。
・・・・・違う。
ちょっとでも由紀の体温に触れていたい。
由紀が生きている事を感じたい。
「・・・・・ココ、夢の国じゃないんで」
まぁ、断られるとは思っていたさ。