・*不器用な2人*・(2)
HR開始のチャイムが鳴る前には安藤さんも保健室へ入って来て、昨日と同じ席に座った。
おはようと声をかけると、おはようと返され、少しだけ温かな気持ちになる。
「安藤さんって井方君たちと別々に登校してるの?」
保健医さんに聞かれた安藤さんは、おずおずと頷く。
「サツキ君と大地君は自転車で登校してるので、私より早く家を出るんです……。
私は薫君や亜衣君と一緒にバスで通うので、結構遅く……」
なります、とまでは言わずに安藤さんは言葉を切った。
ひまわりの家は市外にあるから、彼女たちは随分と遠方からの通学だ。
バスは1時間に2本という頻度でしか出ておらず、しかも1時間くらいかかる。
バスケ部の2人は朝練がある為に早めに到着しなければならず、しかも自転車となるとバス以上の時間がかかる。
――どれだけ早起きしてるんだろう……。
朝早くから明るく振る舞っている2人を思い出して、少しだけ感心してしまった。
「安藤さんは全員分の朝ご飯作ってから登校するんだよね」
保健医さんに言われ、安藤さんは浅く頷く。
「私以外に料理作れる子があまりいないので。
サツキ君は家庭的な方なんですけど、作ってる時間ないみたいだし」
安藤さんの言葉に、桜庭さんがパッと身を乗り出した。
「井方先輩、料理できるんですか……」
目を爛々と輝かせる彼女に、安藤さんはおっとりと頷く。
「サツキ君はカップ焼きそばがすごく上手なんだよ」
いつもよりも滑らかに彼女はそう言うと、硬直した桜庭さんに笑い掛ける。
――カップ焼きそばは料理とは言わない……!!
そう言いたかったものの、妙に嬉しそうな安藤さんに向かってそんなことを言うこともできず、私は保健医さんを振り返った。
既にツボに入ってしまっていた保健医さんは考え込むように手を額に当て、笑いを隠していた。
「あ、安藤先輩の得意料理は何ですか……」
言葉に詰まりながら桜庭さんが訊ねると、安藤さんは笑顔のまま「ビーフシチューとか」と答える。
まともな料理が作れるのに、どうして井方君の料理に寛大なのだろうかと少しだけ疑問には思ったものの、なんだか少しだけ気持ちが和んだ。
おはようと声をかけると、おはようと返され、少しだけ温かな気持ちになる。
「安藤さんって井方君たちと別々に登校してるの?」
保健医さんに聞かれた安藤さんは、おずおずと頷く。
「サツキ君と大地君は自転車で登校してるので、私より早く家を出るんです……。
私は薫君や亜衣君と一緒にバスで通うので、結構遅く……」
なります、とまでは言わずに安藤さんは言葉を切った。
ひまわりの家は市外にあるから、彼女たちは随分と遠方からの通学だ。
バスは1時間に2本という頻度でしか出ておらず、しかも1時間くらいかかる。
バスケ部の2人は朝練がある為に早めに到着しなければならず、しかも自転車となるとバス以上の時間がかかる。
――どれだけ早起きしてるんだろう……。
朝早くから明るく振る舞っている2人を思い出して、少しだけ感心してしまった。
「安藤さんは全員分の朝ご飯作ってから登校するんだよね」
保健医さんに言われ、安藤さんは浅く頷く。
「私以外に料理作れる子があまりいないので。
サツキ君は家庭的な方なんですけど、作ってる時間ないみたいだし」
安藤さんの言葉に、桜庭さんがパッと身を乗り出した。
「井方先輩、料理できるんですか……」
目を爛々と輝かせる彼女に、安藤さんはおっとりと頷く。
「サツキ君はカップ焼きそばがすごく上手なんだよ」
いつもよりも滑らかに彼女はそう言うと、硬直した桜庭さんに笑い掛ける。
――カップ焼きそばは料理とは言わない……!!
そう言いたかったものの、妙に嬉しそうな安藤さんに向かってそんなことを言うこともできず、私は保健医さんを振り返った。
既にツボに入ってしまっていた保健医さんは考え込むように手を額に当て、笑いを隠していた。
「あ、安藤先輩の得意料理は何ですか……」
言葉に詰まりながら桜庭さんが訊ねると、安藤さんは笑顔のまま「ビーフシチューとか」と答える。
まともな料理が作れるのに、どうして井方君の料理に寛大なのだろうかと少しだけ疑問には思ったものの、なんだか少しだけ気持ちが和んだ。