・*不器用な2人*・(2)
「うん、7時くらい」

城島君が言うと、彼は満足げに頷いてカーディガンを腰に巻き付けると鞄を肩にかけ直して体育館から出て行こうとする。

「君、ちょっと待って」

梶君が慌てたように声をかけた。

「1年に転部希望者がいるんだ。できれば許可をもらえると嬉しいんだけど……」

振り返った男子は少しも表情を変えることなく微笑を浮かべたまま「いいですよ」と低い声で言った。

「君、名前は……」

名簿の上でペンを何度も彷徨わせる梶君に、彼はもう1度口を開いた。

「2年の井方サツキです」

石田君が言っていた通りだと思った。

彼は小さく一礼をするとサッサと体育館から出て行ってしまった。
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