・*不器用な2人*・(2)
「じゃあ今日どうするの」

芳野君に聞かれ、淳君は「どうしよう」と呟き、ソッと頬に指先を当てた。

「俺と一緒に回る?」

石田君が立ち止まって、ようやく私たちを振り返った。

淳君も慌てたように足を止めて、ようやく地面から顔を上げる。

前を歩いていた梶君たちも次々と足を止めて、ギョッとしたように木山兄弟を凝視していた。

「俺が淳と一緒に回ろうと思ってたのに」

めぐちゃんがボソッと呟くと、石田君の肩が微かに跳ねた。

それなりに勇気を出して言ったつもりだったらしい。

目の前で硬直している実弟とめぐちゃんのさりげない一言に、彼の表情が徐々に変わっていくのが分かった。

「まぁ、薫がいても別にいいんだけどさぁ……」

めぐちゃんが仕方なさそうに呟くと、今度こそ心が折れたらしく、石田君は両手で顔を覆った。

淳君の何とも言えない表情と、梶君たちの「やっちゃった」的な表情のせいで更に石田君が不憫に思えてしまった。
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