・*不器用な2人*・(2)
「そう言えば今日俺日直……」

淳君が思い出したように呟いたのは、2限目が始まった直後だった。

家から持ってきた本を読んでいた私はギョッとして顔を上げる。

先ほど芳野君たちと別れる際、咄嗟の嘘を口にしつつも、日直がもうすぐ回って来ることをぼんやりと思い出していた。

自分の順番は何となく覚えていても、さすがに淳君のことまでは記憶していない。

まぁいっかと呟きかけた淳君に「良くない!」と慌てて言った。

「クラスで決められてる役割くらいはちゃんと守ろうよ」

ただでさえ1年の時に浮いてしまっていたのだから……。

そう付け加えようとして、それは自分にも当てはまることだと思いだし、すぐに言葉を飲み込んだ。

「じゃあ、綾瀬は明日日直だから、授業サボっちゃ駄目だよ」

淳君は面倒くさそうにそう言うと、荷物をまとめて立ち上がった。

私はわざと気のない返事をしつつも、彼を見送った。

優しい淳君のことだから、私を気遣ってここまで来てくれたのだろうと思い、内心で少しだけ感謝をした。
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