・*不器用な2人*・(2)
久し振りに保健室へと行くと、保健医さんは快く迎え入れてくれた。

久し振り、という明るい声に私の緊張は一気に解けた。

受験生なんだからいい加減にしなさい!と、かつて親から言われた言葉を気にしていたのだ。

大きなテーブルの上にたくさん並べられたカップを見ると、保健医さんはすかさず「多いでしょ」と笑った。

「2年の子たちは集団で来るから。もうベッドが空いてないの。
他に具合の悪い子が来たらどうするのー!ってさっきも注意したんだけどね」

肩をすくめながら、保健医さんは私に来室記録表を差し出す。

「風野綾瀬 頭痛」と書き込みながら、上にずらりと並んだ2年生たちの名前をさりげなく見る。

「2年C組井方サツキ、2年B組城島陽人、2年C組浦和一郎」

たくさんの名前の中に3人の名前を確認し、私は慌ててカーテンの閉まったベッドを振り返る。

「何事ですか、バスケ部……」

私が唖然としていると、背後で扉が開いた。

ジャラジャラとチェーンを揺らしながら入って来たマスクの男子に私は慌てて道を開ける。

「墓屋君、湯たんぽ温めようか?」

保健医さんに声を掛けられた「いっ君」は、小声で「いえ…」と呟きながら1番手前のカーテンを開けた。

中には既に浦和君がいたものの、お構いなしにベッドへと入り、横になる。

「スペースがね、足りないから。2人で1つのベッド使って貰ってるの」

保健医さんの笑顔に絶句しながら、私はもう1度来室記録へと視線を落した。

「2年C組墓屋一郎」という、まったく聞いたこともないこの名前がいっ君のものなのだと、この時初めて知った。

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