・*不器用な2人*・(2)
しばらくし、館外から足音が聞こえてきた。淳君はすぐに口を噤み、何事もなかったとでも言いたげに俯き直す。

体育館に入って来た城島君の胸に、ホットの飲み物が3本も抱かれていた。

先程まで城島君のキャラ作り説を説いていた淳君が息を呑むのが、遠くからでも分かった。

「今、自販機って動いてないよね……。
そもそも今日、暑いよね……」

恐る恐る声をかける淳君に、城島君は笑顔でレモンティーを一缶差し出す。

「コンビニまでひとっ走りしてきた。
どうしても飲みたかったから」

城島君は笑いながらその場に腰を下ろし、私に向ってポンとコーヒーの缶を投げてよこした。

缶コーヒーは完全なコントロールで、私の膝の上に軽い衝撃で落ちる。

ありがたく頂こうと思いそっと手で拾いあげ、あまりの熱さに直ぐ床へと置き直した。

淳君も苦い顔のまま床にそっとレモンティーを置く。

城島君だけが缶を開封し、ゆっくりと飲み始めた。

「顔色悪いけど、寒いの?」

淳君に言われ、城島君はパッと顔を上げる。

「いや、寒くはないけど。
外走って来たからちょっと疲れた感じ」

城島君が言い訳を終えないうちに、淳君は着ていたカーディガンを脱ぐと、城島君の肩に雑に掛ける。

城島君は少しだけ淳君を見たものの、すぐにカーディガンを肩へと丁寧にかけ直した。

「試験あと1日だけだから。
寝込まないようにしなよ」

淳君に言われ、城島君は嬉しそうに顔を崩しながら大きく頷いた。

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