続・鉢植右から3番目
時間が止まったのかと錯覚してしまう。この世界には3人だけで、渡瀬さんの言うことだけが正しいのかもしれないと、そんな事を考えてしまった。
それほどの威力を持っていた。
私はこの人を踏みつけるべきで―――――――彼女は渡瀬さんのしもべに――――――。
ぐらりと上体を揺らして、佐々波さんが口許に手を当てた。
そしてパッと立ち上がる。
その動作で、フロアーにかかった魔法が解けた。
彼女は階段目掛けて走り出して―――――――――あ、と言った。
私と渡瀬さんも揃って振り返る。
「あ」
「あら」
エレべーターホールの壁にもたれて、うちのダレ男が立っていた。実に存在感なく、完全にその場に溶け込んで。
「漆原君」
驚きもせずに、渡瀬さんがニッコリ笑って言った。ハーイ、と片手を振っている。
一度止まった佐々波さんが物凄く意地悪そうな顔で振り返った。
「私がバラしたんじゃないわよ!ざまあみろだわ!」
その言葉は真っ直ぐに、私の心臓に突き刺さる。