続・鉢植右から3番目


 でも結局、昨日、渡瀬さんが用意してくれた部屋は使わなかったのだ。
 
 私が断ったから。

 彼女に脅されて私をエレベーターに乗せようとした夫をぐいぐいと脇にどけて、私は渡瀬さんに断りを入れたのだ。

「お気持ちは有難いんですけど、どうぞお気遣いなく~。私はこれで失礼しますから」

「あら?」

 またスマホでどこかへ電話しようとしていた渡瀬さんが振り返る。

「まだ同窓会は終わりじゃあないわよ?」

「ええ、それは判ってるんですが」

 私は水で濡れて落ちてくる前髪を人差し指で撫で付けた。きっと妖怪みたいな顔だろうから、にっこり笑うのはやめておいて(だって笑顔の威力が迫力になっちゃ意味ないでしょ)、普通の顔で彼女に言った。

「戻っても、あのバカ女・・・で、なくて、佐々波さんの顔みたら仕返しを企んでしまいそうだから、もう帰ります。他の人とのお喋りもするにはしたし」

 それに、あなたチョイスのお洋服が私には怖くてとても着れないと思うんです、と心の中で続ける。

 どうするの?胸元のバーンとあいたものだったら!胸のところがパカパカで布が余りまくったりなんかしたら、違う意味で人前には出られない。

 それにこんな状態でムラムラくることなんて絶対ないと言い切れるけど、万が一の時は部屋を覗くからと断言されたのにも、眩暈を覚えていた。

 覗くんかいっ!!だよ、ほんと・・・。



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