続・鉢植右から3番目


 付き合っていた上司とはあの日以来もう連絡もとれず、一人ぼっちで、飲んでは吐くを繰り返していた20代最後。

 泣いたまま酔いつぶれて眠り、翌朝トイレで吐いてから化粧で誤魔化して出勤していた。

 会社は休みたくなかった。行くことをやめたら、もう2度と戻れないのだと判っていた。ちゃんと辞めるまでは―――――――それが、私の中に最後まで残っていたプライドだったのだ。

 夢の中まで追って来た会社での非難中傷の雨嵐。

 眠れずに益々増えていくアルコールの量と酷い頭痛。

 あの地獄のような毎日。

 昨日佐々波さんに激しく罵られたときに、心臓が裂けてしまったかと思ったんだった。

 思わず胸を押さえたほどだ。

 その過去の、暗いトンネルの中のような日々を思い出して。


 私が結婚した男は、周囲のことに自分の感情をいれて見るようなことはしない。一般常識だって、それ何だ?と言うようなマイペースさを持っている。

 ゆらゆらと流れていく大河の水のように自由に形を変える。だけどその中でも、自分という強い土壌を持っている。彼はそんな男だ。

 それは判っているのだ。彼なら、普段の彼なら、きっと私の過去が、例えば男だった、とかでも気にしないのではないかって。

 あの男はきっと今を見ているのだろう。過去や未来ではなく。

 そう思うし、それを信じたい。

 だけど―――――――――――


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