続・鉢植右から3番目
帰宅すると、私が先に無言でお風呂に入り、交代してやつが入っている間にさっさと寝ることにした。
だって、会話が出来なくて。
なんて言えばいいかが判らなくて。
どうしようもなくて。
ヤツは多分、聞いていた。だけども態度は変わらなかった。普段無口なあの男が考えていることなど判った試しがないが、それでも罵倒されたりどういうことだって問い詰めたりなんぞはなかった。
それが、私には怖かったのだ。
淡々とした反応は腹の中が読めない。あの無表情が一体何を考えてるかを想像するのが怖くて――――――――――逃げ出した、のだ。
それで、今、一人でいる。
モーニングを食べながら考えた。
ヤツは普通だったけど、するとそれはそれで私はどういう反応に出ればいいのか判らない。
過去に勤めていた会社で不倫がバレた時、出社時から退社時まで受けた嘲笑や悪意のある囁きやトイレでの噂話や食堂での集団無視や、受けた数々の嫌がらせを思い出してしまった。
自己退職という形でやめるまで、私は毎日唇をかみ締めて耐えていた。
毎晩会社を出てから自分の部屋に戻るまでの間に泣き出してしまって、重い体を引き摺って帰った。夜はぐでんぐでんになるまで酔いつぶれていた。