続・鉢植右から3番目


「そう、ちょっと食べたくって」

 暑いよね~、ごめんね~、と軽やかに言いながら私はクーラーを強でつける。節電、何ソレ?状態で、ガンガン冷気を出すようにセット。

 サラダとパンのお皿を真ん中におき、自席に座るとヤツがまた呟いた。

「・・・芋が、ない」

 じいっとシチューを覗き込んでいる。

「あ、溶けました。煮込みすぎて」

「・・・」

「味はするわよ、溶けただけ」

「・・・」

 何だよ、ジャガイモ命なのか、おめーは!?とムカついたけど、それ以上は言わずに夫は手を合わせて食べだした。

 私も食べだす。


 沈黙。

 沈黙。

 沈黙。


 お互いのスプーンがお皿に当たる音が部屋に響く。

 ・・・・・・・何をどう喋っていいのかが、わかりませーん。やたらと大きなにんじんを飲み込んで、私は困って俯いた。

 ジーザス。

 食卓では私がいつも喋っている。

 ヤツはたまにそれに相槌を打ち、頷いたりちょっと笑ったりする。返事を求めたら、だら~っと単語で返事を寄越したりする。



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