悪魔的に双子。
ささっと野菜をいためて、玉子焼きとベーコンを添える。


炊きたてのご飯と箸を置いて、ぽっかーんとした顔でわたしを見ている百合人くんを立ったまま見下ろした。


すでに菓子パンが腹の中におさまっていることを考えると量が多い気がしないでもないが、そこは成長期の食欲に期待したい。


洋食なのか和食なのかいまいち判らないが、わたしが作るものなんて、大抵こんなもんだ。


「どうぞ、食べて」


いつまでもわたしを見つめている百合人くんにだんだん気まずい気分になってきて、少しぶっきらぼうにうながした。


外見からして明らかに年上なのだが、黒くて無垢そのものみたいな百合人くんの目を見ていると、8歳くらいの男の子の相手をしている気分になる。


百合人くんは素直にこくりとうなづくと、綺麗な箸運びでパクリと玉子焼きを口に入れた。


「あみことおなじ味だ。」


ぽつりとつぶやく百合人くんに、わたしはにこっと笑った。


「そりゃ、料理はほとんどあみこさ……お母さんに教わったから」


百合人くんは少しうつむいて、上目遣いにわたしを見上げた。


「あみこのこと、お母さんって呼ぶことに抵抗ないの?」


どうやらあみこさん、と言いかけたことを聞き逃さなかったらしい。


「今はないよ。前はないわけじゃなかったけどね。」


「そんなものなの?」


百合人くんにも、抑えきれない好奇心というものがあるらしい。


なんだかわたしに少し似ている。


「抵抗よりも、『お母さん』って呼んだら嬉しそうな顔してくれることが嬉しかったの。」


「俺もっ」


ふいに百合人くんが大きな声をだした。


思わずびくっとなると、百合人くんははずかしそうに頬を赤らめて、小さな声で言った。


「お母さんが嬉しそうなの、好き」


わたしは少しおかしくなって、うんうんと口元に笑みを浮かべてうなづいた。


この人、本当に8歳の子どもみたいだ。
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