Many☆Love
いつもは、大好きな屋上。
今日は、そんな気持ちじゃなかった。
今すぐ逃げ出したい気持ちと、真実を聞きたい気持ちが混じって複雑な気分だ。
「紫音、ごめんなさい」
重い沈黙を破ったのは、伊緒だった。
「誤解させちゃってごめんなさい」
もう一度謝ると、思いもよらぬことを口にした。
「あたしと遥真は、いとこなの。」
「えっ…!?」
あまりにも、突然すぎた。
「あの日、たまたま一緒に帰っていたら、紫音に会って………。あの時の、紫音の顔すごく傷ついた顔してて………、絶対に誤解させちゃったって思って…………」
「ごめんなさい。紫音。」
「なんだ。そうだったんだ!!」
なんか理由を聞いて心が軽くなった。
逃げてた自分がバカみたい。
「あとは、あいつから聞いて。遥真さ、紫音のこと傷つけたってすごくショック受けてるから。」
そうすると、伊緒は『入りなさいよ』と屋上のドアを開けた。
すると、田中くんがいた。
「ごめん。すごく傷つけた。」
「傷ついてないって!!ちょっと、びっくりしただけだよー」
こうでも言わないと、私が田中くんのこと好きってバレるじゃん。
「…お前は運命って信じるか?」
え………。
なにそれ。
やめてよ。こんなところで。
「もう会えないと思ってた人に会えたのって運命だと思う?」
「…え?どういうこと??」
話の意図が分からない。
「高校で初恋の人に再会できたんだ」
私の目をしっかり捕らえて言った。
目を離せない。
反らすことができない。
なんでそんなこと言うの?
なんで私に言うの?
「その子とは、離れちゃったんだけど高校で再会したんだ。
本当に運命みたいだよな。
すごく神様に感謝した。
入学式で、会ったんだ。その子と。
すぐ分かった。あの頃より、きれいになって、背が伸びていて、大人になっていた。
でも俺の大好きな笑顔は変わってなかった。
2年生で同じクラスになれて、めちゃめちゃ嬉しかった。
でも、そいつは俺に、笑顔を向けてくれなかった。
少し、強引なこともしてみた。
大胆なこともしてみた。
話しているうちに、心を開いてくれた。
やっと、俺に笑顔を見せてくれるようになったのに、俺はその子のことを傷つけた。」
空を見上げる田中くん。
「俺は、お前が好きだ。
ずっと、ずっと。」
理解ができない。
なんで?
おかしいよ。