スイート・プロポーズ

「私が、弱音を吐いたあんたを優しく慰めると思ってるの? 帰りたいって言うあんたに、素直にいい、って言うと思ったの?」


瞬きも忘れて、美琴は薫を真っ直ぐ睨みつける。


「自分の夢のために留学したんでしょ? なら、弱音吐くあんたの背中蹴ってやったわよ! 絶対に、帰って来させたりしなかった!!」


通り過ぎる人が、ふたりを不思議そうに見ていたけど、気にならなかった。


「美琴・・・・・・」

「あんた、馬鹿よ。・・・・・・大馬鹿よ」


美琴はぽつりと呟き、再び歩きだした。


あんたの気持ちを私は知らない。

けど、あんただって、私の気持ちを知らない。


私がどれだけ悲しかったか、知ってる?

私がどれだけ寂しかったか、知ってる?


< 179 / 294 >

この作品をシェア

pagetop