スイート・プロポーズ
「もっと気楽に考えなさい。悩むのが悪いとは言わないけど、悩んだからといって必ずしも答えが出るわけじゃないのよ?」

 つまりは、理屈で考えるよりも、感情に従え。
 そう言いたいのだろう。

「これは性格なの。ほっといて」

「そ。でも、あんたのその性格は恋愛には不向きかもね」

 素直じゃないし、負けず嫌いだし、頑固者。
 美琴の言う通り、恋愛には不向きだと自覚している。過去の恋愛も、あまりうまくいっていたとは言えないし。

「君はひとりでも生きていける」

「うっ……」

「そう言われたんでしょ、元カレに。あの時はホントに面白かった。まさか、現実にそんな事言われる人間がいるとはね〜」

 美琴は完全に、面白がっている。

「……部長も、そう言うかもね」

「気にしてんの?」

「元カレに言われた事は気にしてない」

 けど、内容は気にしている。
 もしかしたら、今まで付き合っていた男性達は、みんなそう思っていたのだろうか?
 そして、いつか夏目もそう思う日が来るのだろうか?

「言わないと思う。だって、円花の性格、部長はよく分かってるでしょ?」

「…………そう、かな?」

 美琴が力強く頷く。円花の性格を知っている夏目が、今になって好きだと言った。
 それは、彼女の性格を好意的に受け止めている証拠だと思う。

「だから、たまには素直になったらどう?」

「……それが出来れば、苦労しない」

 並べられたネクタイピンを、円花は眺める。
 どれが1番、夏目らしいだろう?

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