スイート・プロポーズ
「……変よね」

「何が?」

「どれが部長に似合うのかばかり考えてる」

「当然でしょ。部長へのプレゼントなんだから」

 美琴が首を傾げると、円花は苦笑する。

「相手の事ばかり考えて、自分の気持ちは無視してる」

「………………」

 夏目が自分をどう思っているのかもばかり考えて、自分がどうしたいのかは気づかない。
 美琴の言った通り、理屈でばかり考えようとするから。自分の気持ちーーそんな単純な事、忘れていた。

「私がどうしたいか、ね」

「それより、決めたの? かれこれ2時間、この店にいる」

「…………」

 時計を見ると、もうお昼を過ぎていた。2時間も店にいるのだと自覚した瞬間、居心地の悪さを感じ始める。
 さすがに、買って行かないとまずい。

「えっと……」

「コレとかどう?」

「派手すぎない? こっちは?」

「いやいや、ちょっと可愛すぎない?」

 店員の視線が気になる。早く購入して、店を出て行こう。お昼は、以前から行こうと約束していた店に行くと決めている。

「あの、コレお願いします」

「かしこまりました」

 店員は笑顔で、円花が指差すネクタイピンを取り出してくれる。

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