スイート・プロポーズ
「昼間、何かあったのか?」
先に口を開いたのは、夏目だった。円花を真っ直ぐと見つめている。
「別に、何も……」
何もなかったわけじゃない。
だが、夏目に言うべきことは何もない。
そういう意味で答えたが、夏目がその真意に気づくはずがない。円花は目を逸らしてしまっている。
「帰る時、泣きそうな顔をしてたようだから……」
エレベーターの時のことを言っているのだろう。確かに、気を抜いたら涙が流れたかも。
けど、現実には泣いていない。
「気のせいですよ」
笑顔で否定してみたが、夏目は納得していないようだ。ベッドに座る円花の隣に、移動する。
「……大丈夫か?」
円花は気づいていないだろうが、今の自分の表情は、あまりにも暗い。先程向けた笑顔も、無理しているのが分かるほど。
それに気づかない程、夏目は鈍感じゃない。
「ちょっと、考え込んでしまって……」
嘘は言っていない。本当のことを言うわけにはいかないから。
今の自分は、中身がぐちゃぐちゃだ。相反するふたつの感情が、自分の中で駆け回っている。
それを口にすれば、少しは楽になるのだろうか?
「あの……」
「ん?」
隣の夏目を見上げてみるが、やっぱり言えない。言いたくない。
こんなぐちゃぐちゃな自分を、知られたくない。勝手だと言われてもいい。
夏目の中の【小宮 円花】は、綺麗なままでいてほしいのだ。
「な、なんでもないです……」
「円花、話して楽になることもある。こうして直接、話を聞ける機会も少なくなるんだ。俺に甘えてほしい」
「……その、あの……」
夏目に見つめられて、円花は泣きそうになった。
先に口を開いたのは、夏目だった。円花を真っ直ぐと見つめている。
「別に、何も……」
何もなかったわけじゃない。
だが、夏目に言うべきことは何もない。
そういう意味で答えたが、夏目がその真意に気づくはずがない。円花は目を逸らしてしまっている。
「帰る時、泣きそうな顔をしてたようだから……」
エレベーターの時のことを言っているのだろう。確かに、気を抜いたら涙が流れたかも。
けど、現実には泣いていない。
「気のせいですよ」
笑顔で否定してみたが、夏目は納得していないようだ。ベッドに座る円花の隣に、移動する。
「……大丈夫か?」
円花は気づいていないだろうが、今の自分の表情は、あまりにも暗い。先程向けた笑顔も、無理しているのが分かるほど。
それに気づかない程、夏目は鈍感じゃない。
「ちょっと、考え込んでしまって……」
嘘は言っていない。本当のことを言うわけにはいかないから。
今の自分は、中身がぐちゃぐちゃだ。相反するふたつの感情が、自分の中で駆け回っている。
それを口にすれば、少しは楽になるのだろうか?
「あの……」
「ん?」
隣の夏目を見上げてみるが、やっぱり言えない。言いたくない。
こんなぐちゃぐちゃな自分を、知られたくない。勝手だと言われてもいい。
夏目の中の【小宮 円花】は、綺麗なままでいてほしいのだ。
「な、なんでもないです……」
「円花、話して楽になることもある。こうして直接、話を聞ける機会も少なくなるんだ。俺に甘えてほしい」
「……その、あの……」
夏目に見つめられて、円花は泣きそうになった。