スイート・プロポーズ
 本数よりも、今はこの状況を説明してほしい。理解できなくて、軽いパニックだ。

「1本の意味は、あなたしかいない、だそうだ。アメリカにいる間、必死に考えた」

 円花の困惑をよそに、夏目は話を進める。
 円花は未だに状況を理解できないが、後悔している。今日会うと分かっていたら、もっと綺麗にしたのに。暑さのせいで汗もかいてるし、条件は最悪だ。

「あの、部長……私……ど、どうしたんですか?」

 夏目が、まるで騎士のように膝をつく。驚く円花を、夏目はおかしそうに見上げている。

「本当は、誕生日にこれを渡す予定だった。けど、思っていたより時間がかかって、1ヶ月の遅刻だ」

「あ……」

 もしかして、誕生日に花が来なかった理由は……。
 それを知った途端、円花は自分でも単純だと思うが、安堵した。

「受け取ってくれるか?」

「はい、もちろん」

「じゃあ、これは?」

 薔薇を受け取ろうとした瞬間、夏目が何かを取り出した。
 それは、見間違いじゃなければ指輪、だと思う。

「これも、受け取ってくれるか?」

「あの、それって……つまり……」

 プロポーズ?
 固まる円花に、夏目は苦笑する。

「会いに来てみれば、教会だ。出来すぎてる気もするが、利用しない手はない」

 夏目はアメリカにいる間、ずっと考えていた。プロポーズの方法を。
 色々と情報を仕入れたし、実際にプロポーズをした人の意見も聞いた。参考になった部分もあったが、大切なのは気持ちだ。小難しいことは抜きにして、自分の気持ちを伝えることを最優先にすることにした。
 そしたら、円花は今教会にいると言うではないか。帰国して早々、チャンスが舞い込んだようなもの。
 夏目は迷うことなく、今日をプロポーズの日に決めた。

< 292 / 294 >

この作品をシェア

pagetop