小さな光 ~月と太陽~
「藤、聞いたか?」


「何を?」


「朱音さんが最近帰ってきたらしいって」


「………あっそ」



あたしはリビングにドアの前に立っている。


部屋に入ろうとしたら2人の会話が聞こえたから少し盗み聞き。



けど、聞いて後悔した。


全く知らない人の名前が出てきた。


『朱音さん』


女の人の名前、誰?



「お前はモテていいねぇ~
俺にお前のその容姿を分けてくれよ」


「そんなもん分けられる訳無いだろ」


「俺もお前くらいカッコいい男だったら“アズちゃん”が惚れてくれていたかな」



あたし!?


藤はカッコいいけど…あたしはカッコいいだけで藤を好きになったわけではない。

藤の仕事姿、料理、優しいキス、腕の中そして、
藤の過去。


あたしは藤の全部が好きなのだ。


他の誰でもなく、藤だから。


リビングに居る藤はどんな顔をしているのかとっても気になる。


『朱音さん』が頭の隅に残ったまま、あたしはリビングへ入っていった。







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