小さな光 ~月と太陽~
勢いよく入って来て、あたしに向かってニコニコしているのがあたしのお母さん。


「暑いから閉めて」


「んもう、アズ話し聞いていたの?

世界旅行よ、世界旅行♪」


「よかったね。

けどお母さん、仕事は?」


「まだ考えてない。
早くお父さんにも教えてあげよっ♪」


普段あまり家に帰ってこれないお母さんが勢いよく走ってきたときは必ずと言っていいほど……


良いことがない。


16年間生きてきて学んだ事。


今回は世界旅行ね…


去年の冬にも似たようなことがあったよ?
覚えていないかな?


あの時は北海道旅行だったはず。


結局、2人とも仕事が忙しくて無理だったんだけどね。


どうせ今回も行けないな…


お母さんは「それじゃあバイバイ」と言って部屋から出ていった。


はぁー、嵐が去った。


お母さんは話すだけ話して出て行ってしまった。



結局お母さんは『世界旅行』自慢したかっただけなんだとこの時は思っていた。


あたしの両親は仕事を何日も休める程の人たちではない。


けどまさか2人が本当に旅行へ行ってしまうだなんて思ってもいなかった。





< 3 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop