水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 



「悪い。
 
 でもオレは帰れない。

 おふくろは、オレが居なくても
 兄貴だけがいたら平気だよ。 
 
 おふくろの自慢は、
 デキのいい自慢の兄貴だ……」




オレはいつも兄貴と比べられてきた。



そんな時間がうっとおしかった。





そんなオレが
ようやく見つけられた居場所。



大切に思えた場所。





妃彩と出逢えて、
妃彩を通して家族も大切だと感じられた。



両親を失っているアイツを見てきたから。





ガキの頃からずっと憧れて大好きだった
親父の背中も、
今は素直に受け止められるようになった。





だから誰に反対されても、
警察官になりたい。



その夢はもう曲げない。


蓋をしない。
隠さない。



大切なものを見つけた今だからこそ
オレは、オレの大切なものを
何とかして守り切りたいんだ。


失う前に、
その大切さに気が付けた今だから。





「兄貴……。

 悪い、全てが終わったら
 帰るから。

 今は帰れない」




それだけ告げて電話を切った。





その直後、再度鳴り響く電話は、
有政からの電話だった。




「氷雨、悪い。
 
 南緒の友達が、
 今病院に担ぎ込まれた」
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