水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

「良かった……。

 これを乾かしてクッションカバーを縫えば、
 立派なクッションが完成しそうです。

 後は……こっち。
 まだ上手く出来ないから、同じものなの。

 絞り草木染で作ったハンカチ。

 氷雨くんには、草木染の毛糸でセーターとマフラーも今から頑張る予定なんだけど
 氷室さんにもお近づきの印。

 ちゃんと乾かして完成したら貰ってね」




そう言うと、彼女は染め上がった布や糸を和花さんと一緒に
何処かへ乾しに出掛けたみたいだった。




一人、紅茶を頂きながら飲む時間。



私は……氷雨のことを心配して気にかけながらも、
氷雨の為だけではなく、彼女自身が夏の頃よりも、秋にあった頃よりも
一歩ずつ力強く歩き出しているのを感じた。



待つだけの時間が終わった彼女。



今も……受け身で流されることから
抜け出せない私自身。






私自身が持つことが出来ないその輝きを感じた、
時雨や氷雨たち……親友たちと同じ匂いを感じる彼女が
気になって仕方がない私が、そこには存在していた。





親友の……
氷雨の彼女だとは知りながら。



  
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