水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」
彼女の手助けがやりたい。
恋人と言うボジションでは叶うはずのない想い。
だけど……氷雨が、
警察官になると言うなら、金城の小母さんの様に
不安を抱えるかも知れない彼女を、
専門的に友人としてサポートすることが出来たら……
傍に居続けることは出来るかもしれない。
そんな風に、彼女の傍に居たいと言う想いを通して
私の中で、未来に繋がる想いが広がっていく。
そんな私自身の感情に気が付いた時、
私は最後にもう一度、自分と向き合いたくて
あの教会へと踏み入れた。
教会の中は、何時もの倍音ヒーリングの時間。
見慣れた顔の患者さんたちが、
自らの声を震わせながら、パイプオルガンの音色に
歌詞にならない声を乗せ続ける。
そのグループの中には入らずに、
ゆっくりと祭壇の方へと歩いて向かうと、
椅子に座って、
じーっと十字架と聖母マリアの像を見つめていた。
「こんにちは」
暫くして声をかけてくるのは、
いつもの勇人くん。
「こんにちは。
今日もお邪魔してます」
「来てくださって有難う。
リズママも喜びます。
もうすぐ、リサイタルが始まりますよ」
「それは楽しみです」
「氷室くんは、
何かいいことがありましたか?」
問われた言葉に私は静かに頷く。
「春に同じ大学に行く、
私の中の理由が少しずつ
明確になってきたかも知れません」
「それは、楽しみですね。
僕も必死に試験をクリアしないと」
「来月はもうセンター試験だもんね」
そんな会話をしていると、
歌姫と、もう一人女性が一緒に入って来る。