水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


指先越しに伝わる、
氷雨の体温が心地いい。




「氷雨、似合いますか?」




今、私……氷雨って呼び捨てした。


氷雨の前で……。



ずっと心の中では、
何度も何度も呼び捨てしてたから……。




そう問いかけた私に、
氷雨は照れくさそうに
『妃彩らしいな』って言ってくれた。





そのまま外に用意された今井さんの車の
後部座席に乗り込んだ私。



後から積まれた車椅子。







小さくて狭い……
ただそれだけだった私の世界に、
ゆっくりと光を注ぎ込んでくれた氷雨。




氷雨のキラキラと輝く光(オーラ)は
私には眩しくて、恋しくて……
透明な水晶(クリスタル)の宝石。





走り出した車の中、
ゆっくりと繋いでくれたその手は、
彼の暖かさ。





車は見慣れない繁華街へと移動して、
少しレトロな建物の前で、
ゆっくりと車は止まった。



今井さんが運転席から移動して
後部座席を開ける。






すると、あの花火の日に出逢った
見覚えのある少年たちが、
扉の向こうから出てきた。




「氷雨さん」
「氷雨」




それぞれに、氷雨のことを
思い思いの名で呼んでる。




「車椅子、お持ちします」




そう言って、車内から車椅子を運び出すと、
それは瞬く間に、建物の中へ。



私はと言えば、再び
車内からお姫様抱っこで
氷雨に抱えられて入っていく。



氷雨くんを囲む少年たちからは、
冷やかしの歓声があがる。




建物の中は、
1日早い、クリスマスパーティの準備?




テーブルの上に並べられた
オードブルに飲み物。





氷雨に寄ってゆっくりとおろされた場所は、
中央に支度された、ボックス席の一角。


中央から見渡せるように、
作られていたその空間に
座ると、膝の上にはひざ掛け。



先に持ち込まれた車椅子は、
そのソファーの隣にロックされて置かれる。


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