水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 



紅蓮って何?

暴走族?不良?



私にとっての氷雨くんは、
私の知らない世界を運んでくれる
素敵な存在だよ。



私の知らない氷雨くんの世界が
まだ沢山あるなら……そんな氷雨くんも知りたいよ。


チームって何?
もっともっと、氷雨くんを知りたい。


そして私を連れ出してほしいの。
氷雨くんが輝いてる、その明るい世界へ。




そう思ったら……、
何故か、私の存在を伝えたくて
必死にベッドから車椅子へと移動する。

体力が落ちている体は車椅子に移動するにも、
支え切れなくて床に落ちてしまったけど、
それでも何とかドアの方まで這いずって向かうと
私はただ、向こう側とこの世界を隔てる
開かず扉をバンバンっと
手に拳を作って叩き続けた。



氷雨くんの名前を呼びながら。




それでも、私の声は届かないのか
無視されたのか、
この日も私が、開かずの部屋から連れ出されることはなかった。



翌日からは、施設のスタッフたちから
氷雨くんの噂を聞かなくなった。





……氷雨くん……。

私、ここに居るよ。
ちゃんと居るよ。



もう諦めちゃった?



毎日来ても、
居ないって断られるから。





それでもドアを叩き続ける私。

体のあちこちには、内出血の跡が増えても
それでも私の居場所を知って欲しくて、
ドアを叩くことだけはやめられない。


それだけが、私がこの場所に居るって
私が発信できるメッセージのように思えるから。



そんな私の状態に、スタッフの風当たりは強くなって
最近では、益々胃が拒絶するように水すら喉を通らなくなった。


そんな私に施されるのは、
義務的に生命維持に必要な、栄養を点滴で補充されるだけ。


枕元のカレンダーは、
更に×印が4つほど埋まった。




そんなある日、夢が起きた。





『妃彩……』



夢の向こう側、誰かが私の名前を呼んだ気がして
ゆっくりと重い瞼を開いた。




「妃彩……。
 遅くなって悪い、迎えに来た」




そうやって私をベッドから
抱きかかえるのは
ずっと逢いたかった、氷雨くん。


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