彼女志願!2nd

江戸時代の風俗本を手に取って、ぱらぱらと中身をめくったり、それっていったい何の本?と尋ねたくなるような背表紙を眺めたりしていると、あっという間に時間がたつ。


ふと顔をあげ店内を見回したけれど、穂積さんの姿がない。


あれ……?


書店を一歩外に出て、周囲を見回す。

と、少し離れたところで、穂積さんが携帯で話している姿が目に入った。


何を話しているのかはわからないけれど、そのちょっと厳しい横顔からしてどうやら仕事の話らしい。


もしかして作家からかなぁ……。


編集者は基本土日休みで、一切連絡がとれない編集者もいるけれど、穂積さんは土日でも仕事用の携帯は手放さない。

電話があればすぐに出るし、メールの返事だってする。

穂積さんが頼りにされるのも当然だと思う。


自分が担当作家として穂積さんと接していたときは、それをとても頼りにしていたけど、

こうやって違うところから見てみると、彼のプライベートな時間って、ほとんどなくなっちゃうんだってわかって、ちょっと切ない……。



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