大嫌い。でも…ほんとは好き。(旧題:ラブ・ストリーミング) 番外編
「それから、武内とあんまりイチャイチャするな。あいつが結果的に辛くなるだけなんだからな」

 とってつけたように言うと、芽衣がじっと伺うように見て来る。

「……課長って」
「なんだ?」
「やきもち、とかじゃないんですか」

 矢野はぐっと答えに詰まって誤魔化したまま、小指までをなぞっていく。
 内心を見透かされるようで気分が悪い。矢野は芽衣の顔を見ずに答えた。

「誰か、おまえになんか。監視に入ってるんだよ。上の連中が」

 顔色を変えないで淡々と。その実は、照れくささでおかしくなりそうだというのに。

 こういうことでしか自分の想いを表現出来ないとは。
 ガキか……吐き捨てて、矢野は溜息をつく。

 芽衣の細い指を見つめ、左薬指にそれとなく触れた。
 想いをうまく伝える代わりに、何をすべきか考えた。

「……5号ぐらいか。細いな」

 この時の呟きを、芽衣が聞いていたかどうかは分からない。
 自分が彼女の手に夢中になっている間、彼女は自分を見つめていたらしい。

「なんだ、そんな目で見て」
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