ガラスの靴をもう一度
しばらく、ただ座っていただけの私たち。
夜の街を見つめながら、会話もない時間を、雅貴以外の人と過ごすのが信じられない。
私にも、そんな事が出来るんだって分かった。
「萌ちゃん、帰ろうか?ありがとう。付き合ってくれて」
ふいに川上くんが立ち上がり、私を笑顔で見下ろした。
「ううん。話す機会、作ってくれてありがとう」
「いや、フラれる気がしてたから、それを止めたくて悪あがきをしただけだよ」
苦笑いの川上くんに、私も小さく吹き出した。
そっと手を差し出され、それに応える。
そして立ち上がった私は、川上くんと歩き始めたのだった。