Kiss Kiss Kiss

「瀬崎はね…愛さない……愛せない人よ……。
自分でもわかってるの　自分は欠落した人間だからって。
誰にでも優しいのは…優しくされずに
生きてきたから……初めて優しさを知ったとき
どれだけ救われたか……だから欠落してる部分を
隠すために　誰にでも優しい……
女にも……男にも…道端の草にだってね……。」

「私は道端の草と同等ですか……。」
江上さんの声は消えそうだった。

「違うわ　あなただけじゃない
彼のまわりにいる女たちはすべてね
私もそう…だから耐えられなかった……。」

「真澄さんが？だって結婚もしてたし
子供もいるのに？」

「それは……私が彼を昔から知っているから…
ずっと好きだったから……
そして陥れて…子供を作ったから……。」

陥れて？

大人の会話は時についていけないけど

「彼に本気で愛されたことは・・・ないわ。
誰にも言いたくなかったけど・・・
特別な存在と思われていることは
それなりに優越感だったけど……
実のところは……何も変わらないってことよ。」

「なぜ愛さないんですか？」

「その過去を話すのは…個人情報上問題があるけど
一人だけね…彼が愛した人がいるの。
そばで見ていてたまらなかった・・・・。
嫉妬でおかしくなりそうで　そして
とても彼が心配だった……。」


私の心にも何か刺さった気がした。