Kiss Kiss Kiss

「実は私も彼に会いに来たの。
ちょっとあなたのように悲しんでいる子の話を
小耳にはさんで　誰にでも優しい彼が
なぜそんなことをしたのか
とても興味深くて……そう……。」

「私だけじゃないんですか？
誰か一人だけ特別な人ができたんだと…
そう思ってました。」

「特別な人を今さら　つくるっていうのも
疑問だったから……探りに来たってわけ。
でも　遅くなるらしいわ。
きっとあなたみたいに　今頃泣いてる女がいるのかも。」

江上さんの嗚咽が聞こえた。

「万が一
彼を手に入れてもね
愛されない切なさやジレンマは辛いのよ。
それは私が経験済み……
彼が愛するってことに踏み出せれば
状況は変わるけれど……
今のところあの根深いところを
治療するのは難しいわ。
どんなに美しくても可憐な女でも……。」

「真澄さんに会えてよかった……
私はどんな形でも先生を失いたくなかったから
特別な人を殺してしまうくらい
悲しかったから……。」

「多分…そう考えてる人は
他にもいるはずね。
夕日ちゃんに戸締りするように言わなきゃ。」

真澄さんのため息が聞こえた。