流れる星を見つけたら
女性は限定に弱い
連れて行かれたのは
ファッションビルの裏側にある、オフィス街。

そのビルの谷間にそっとある
可愛らしい
オレンジ色した壁のお店。

知ってる
ここのイタリアンの店知ってる。

味が良くて雰囲気が良くて
ランチは混むし
夜は予約がいっぱいで話題の店。

生唾飲んで店に入ると
意外と広かった。

社長が名前を言うと
礼儀正しいお姉さんが笑顔で奥の席に案内してくれる。

レンガ造りの壁にイタリア国旗が飾られ、小さな花と磨かれたグラスと銀に光るカトラリーが私達を待っていた。

「コース料理を頼んである」
乱暴に椅子に座り
ふんぞり返って社長が言うと、食前酒が運ばれる。

美味しそうな白ワイン。

邪悪刑事が注がれたワインのボトルを読み、何やら感動していた。

「値の張る食前酒ですね」

「値段は見ない主義だ」

金持ちマー君と貧乏な私
一冊本でも書こうか。

「好き嫌いはないのか?」

さりげなく
自分の向かい側に座る女性陣に聞くマー君。

優しいじゃん。

「ええ大丈夫」
余裕だなお姉さん。
私なんて実はビビってるよ。
こんな話題の店に来れたなんてキョロキョロしてしまう。

「落ち着け」

「だって凄いね社長。ここって有名店だよ」

「大した事ないぞ。高校の後輩の店で、へタレた変な男がシェフだから」

そう言ってまた偉そうに胸を前に出していると

「悪かったですね」
社長の背中から
背の高い白のフロックコートを着て、高い帽子をかぶった人が声を出す。

「キャンセル待ちを教えてあげた後輩に向かって言うセリフですか?いくら先輩でも怒りますよ」

静かなる声に社長の動きが止まる。

きっとマー君は偉そうに先輩として威張ってたけど、シェフの方が一枚上手で 怒ったらハンパなく怖いタイプだろう。

でも
その顔は
とっても優しくて癒し系で
あ……イケメン

でも
この店は
予約の取れない店で有名だけど

もうひとつ
変な噂がある。
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