モノクロ
横から佐山さんの手が伸びてきて、「貸して」と私の手の中からするりと企画書が抜かれた。
佐山さんが企画書に目を通し始める。
「佐山さん?」
「あぁ、客層な。企画で客層を書くのは基本。営業が考えるような内容にもなるけど、どういう客に売っていきたいかは作る上でもあらかじめ考えておく必要はある。狙いを定めないと当たるものも当たらないからな。どんな客層狙ってる?」
「えっと……メインのターゲットは若い人です。スマホとかタブレットで小説や本を読む人が増えてますけど、本のページをめくる感覚ってやっぱり特別だと思うんです。おしゃれなブックカバーがあれば、本を買ってみようかなって思ってもらえるんじゃないかって」
「方向性がふわっとしてて大雑把だな。あと、ここ。依頼するデザイナーだったりイラストレーターだったりも、佐々木さん目線だけじゃなくて客観的に見ないと、偏ることになる。もちろん一緒に企画を進めていくメンバーの意見も入ってはくるけど、代替案は用意しておいた方がいい。売れないものを作って企画者の自己満足で終わるのは困るからな」
「確かに……」
「で? 売る場所は」
「あ、ここに書いてます。雑貨屋さんメインで考えてます」
「さっき、本に興味のない人にブックカバーを買ってもらって本を買ってもらえたら、と言ってたよな? 本に興味がなければ、どんなに好みだったとしてもまず雑貨屋でブックカバーを買ってまで本屋に行こうという気にはならないと思うけど」
「あ」
「その辺りはもう少し考えた方がいいかもしれないな。もちろん佐々木さんと同じような考え方をする人もいるだろうから、ある程度の効果はあるかもしれないけど」
そうだ。私、自分の目線でしか考えてなかった。
自分ならこう思うから、きっと他の人も同じように思うだろう、って。
でも私は本が好きで、本を読まない人の目線にはなっていない。
……じゃあ、本を読まない人の立場に立った場合、どう?
雑貨屋さんにブックカバーだけが置いてあった時に、買いたいと思うのかな?
……そのものがなければ、きっと買おうという気にすらならない。
デザインが自分好みでなかったら、やっぱり興味すら持たないだろう。
それなら……?