闇
「……椎名と同じクラスの者です。貴方は、誰ですか?」
曽根倉君が、私達を庇うように手を広げながら、その男に尋ねる。
すると、床に倒れていた翔織が、ゆっくりと顔を上げ、此方を見た。
頭から、出血している。
その血は顔に流れていて。
赤の中に、別の色を した紅瞳が、苦しそうに光っていた。
男は、私達に向き直ると、今迄の形相とは打って変わって、人懐っこそうな笑みを浮かべる。
「何だ、翔織のクラスメートか。」
彼は ゆっくりと、私達に近付く。
翔織の肩が ぴくっと動いたが、彼は何も せず、じっと男を見つめている。
「俺は、翔織の叔父で……義父だ。」
「!!」
その言葉に、私達は目を見開く。
叔父で、義父。
その言葉は、翔織の実親が もう この世に居ない事――翔織が、10年前の、一家 虐殺 事件の生き残りである事を、立証するものだった。