翔織の叔父は翔織に、また来る、とだけ言って、家を出て行った。

「翔織っ。」

私は直ぐ様 翔織に駆け寄る。

でも翔織は、傷だらけの ぼろぼろの状態なのに、鋭い声で叫んだ。

「来るなっ!!」

その声に、私達4人は、息を止める。

「と、しき……?」

あぁ、何で そんなに、苦しそうな瞳を しているのに。

傷付いた心で、優しさを求めているのに。

そんな、闇しか映していない瞳で、私を見るの……?

翔織が口を開く。

彼は その言葉で、私と……自分の心を、切り刻んだ。















「……別れよう……桜。」















久し振りに呼ばれた苗字。

それは、私を崖から下へ突き落とす言葉。

「……嫌っ!!」

気が付くと私は叫んで、傷付いた翔織の躰に、しがみ付いていた。

「どうして!?私が何か、気に障るような事したの!?」

「違うっ!」

否定し、翔織は言葉を切る。

瞳を私から背けて。

「……頼む。…………解ってくれ。」

……あぁ……貴方は いつも言葉少なで。

貴方は この時 私に、何を解って欲しかったの?

「……嫌……っ。」

ぱんっ。

乾いた音が響く。

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