笑顔で頷いてくれた桜を見て、緊張が少し溶けた気がする。

昔と変わらない、優しい笑顔。

それを いつ迄も眺めていたいと思った俺に、桜の言葉が突き刺さる。

「……椎名君の瞳、とっても綺麗。」

俺は、動揺を悟られないように する。

――忌み子。

昔、幾度と無く投げ付けられた言葉。

この血のような、紅い瞳が大嫌いで。

右目は、眼球を傷付けてしまって、今も良く見えないのに。

君は――そんな汚れた瞳を、綺麗と言ってくれるのか……。

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