溺愛トレード
天蓋から垂れ下がるレースのカーテンが風でふわりと膨らんで、私と瀧澤さんの間に入る。
「ひゃあっ!」
「座ってないで」
そのカーテンを目隠しにして瀧澤さんが飛びついてきたから、私は用意されたクッションにそのまま体ごと倒れ込む。
必然的に、瀧澤さんに腕枕される形になった。
「ここは時間がゆっくりだと思わないか? 東京と同じ時間が流れているなんて、とても信じられない」
優しい腕に肩を抱かれて少し力を抜くと、瀧澤さんは目を閉じた。
その綺麗な顔を盗み見て、程よくたくましい腕に頭を預ける。薄いシャツからは、洗いたてのいい香りがする。
「そうですね。仕事中の瀧澤さんは、なんだかんだで忙しそうですもん」
ランチをしていても、意味もなくクラウンデパートの中を歩いていても、ひっきりなしに電話がきたり、時にはそんな時間を裂いて会いに来る人もいる。
大企業の御曹司様は、それを嫌な顔一つせずに受け入れているけど、なかなか大変なんだなぁ、と思ってみていた。