溺愛トレード

 私は自分に負けたことがない。

 どちかと言えば決断力もある。そうじゃなかったら、実乃璃みたいな変人の友だちでいられるはずがない。

 自分は自分だから、と一線を引いて人にそのテリトリーに侵入させないことができるはずだ。

 お揃いのノートを、鍵付きの引き出しに隠しているように……自分に鍵をかけて、周りに流されないようにする。



 それなのに、瀧澤さんはいとも簡単にその鍵を壊そうとしてくる。




「乃亜はどうしてキャンドルの炎を好きなの?」

「それは…………」


 函館の上空でなんとなく答えた事を、瀧澤さんは覚えてくれていたんだ。

 プールサイドに並べられたキャンドル……お金持ちなら誰でやるのかな? 実乃璃の島でも、同じようなことをしていた。

 キャンドルは星の輝きを邪魔しないから、その景色が綺麗で私は実乃璃に感謝した。


『ありがとう、こんな綺麗な景色はじめて……人工的な光と自然の光が両方楽しめるなんて…………』


 って、あれ?


 私、実乃璃に感謝したんだっけ?


 実乃璃はたしか遊び疲れて眠っちゃっていて、私は隣の島から遊びに来たお兄さんに相手してもらっていて……


 キャンドルを並べてくれたのは、その人で……



 
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