溺愛トレード
────朝食のトーストと目玉焼きをお皿に盛り付けて、携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし、徹平? おはよ」
「おはよー乃亜……今日仕事?」
「仕事だよ、徹平は?」
「俺も仕事…………」
徹平の沈んだ声に背筋がぞくりとした。
「ま、まさか、実乃璃と朝を迎えちゃったわけじゃないよね?」
「む、迎えるわけないだろがっ! 昨日はあのあと、公園行って缶コーヒー買ってベンチで飲んでお話して、実乃璃ちゃんを家まで送っただけだよ」
あ、理想的デートだ。いつもの徹平らしさに、ほっと一安心。
「俺だって、それなりに実乃璃ちゃんの攻略法は心得てるから大丈夫だよ。あそこで変に反対すると余計に大惨事になることもわかってる」
「徹平……」
さすが私が惚れた男。わかってくれてたんだ。
「それより、そっちの方が心配。
何あの男? 芸能人かよ、てくらいのイケメンじゃん。乃亜、大丈夫だったのかよ」
「だ、だいじょうぶ!」
完璧に声が裏がえった。馬鹿、私!
携帯を持つ手が汗ばむ。
大丈夫。ただ、ちょっとだけ唇と唇がぶつかったけど、あれはキスなんてものじゃないし、それに「明日仕事なので」と言ったら瀧澤さんはあっさりと私を解放してくれた。