溺愛トレード

「本当にぃ?」


 痛い沈黙。

 ここで実乃璃みたいにあることないこと御託を並べてしまえばいいんだろうけど、私にはそれができない。


「ごめん、徹平。でも本当に大丈夫だよ。あの人、実乃璃のことちゃんと好きなんだってさ」

 徹平はもう一度、本当にぃ? とわざとらしい声を出した。


「とにかく、今日仕事終わったら徹平の部屋行くから」


 彼氏トレードしても、徹平の部屋に行くなとは言われてない。それに「わかった、待ってるよ」なんて優しい声を出されると、やっぱり私には徹平しかいない、と思える。


 確かに瀧澤さんはイケメンで芸能人みたいな人だけど、私が好きなのは徹平。


 だから、乃亜と呼ぶ甘い声も、絡みついてきた両腕も、眼前にせまった美しい顔も、ちょっとぶつかってしまった唇も、あれは蜃気楼みたいなもので、いつかは全部消えて実乃璃のものになる。


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