溺愛トレード

 ニースにはプロバンスな風が吹いてるってことを知らなかった私は、ニースをコンビニか何かの類いだと思ってた。


「うわ、可愛い!」

「でしょう? 週末にニースに行くから乃亜ちゃんにも同じものを買ってきてあげるわ」


 私は、その申し出を断った。


「ううん。可愛いけどいらないよ。だって、友達に何か買わせたら友達でいられなくなっちゃうんだよ、って学校の先生が言ってたもん」


 実乃璃はアン・カイエのノートを抱えたまま、内股でその場に立ち尽くしてた。


「いらないの? 私とお揃いのノートが嬉しくない?」

「実乃璃ちゃんとお揃いは嬉しいし、可愛いノートは欲しいけど、お小遣い貯めたら自分で買いに行くよ」


 実乃璃は嬉しそうに、顔いっぱいの笑顔で「うん!」と答えると「ねえ、今日も公園で遊ぼうよ」と言った。



 実乃璃があの時持っていたノートは、アン・カイエの社長が自分の孫娘のために作ったといわれるプレミア品で世界に三冊しか存在しない。

 その価格は現在数百万円以上とも言われていて、コレクターたちの中ではプレミア中のプレミアの超レア品と言われてる。三冊のうち一冊は孫娘が博物館に寄付した。


 残りの二冊は、世間では行方不明の宝とか騒がれている。

 一冊は多分実乃璃が持っている。そしてもう一冊がまさか日本支社の一社員の鍵つきの引き出しの中に保管されているなんて誰も想像できないはずだ。




 
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