溺愛トレード

 なんで私、この人に名刺という個人情報満載なものを差し出してしまったんだ?

 瀧澤さんは朝からパーフェクトスーツ姿で、二人のお供を従えて、うちの一番ゴージャスな応接室で優雅にくつろいでいる。


「あの、すみませんが仕事があるから帰っていただけませんか……? できれば、今すぐ」 


 瀧澤さんは寂しそうな顔をした。


「冷たいね、乃亜。昨夜、愛を誓い合った仲だろう?」


 断じて、誓ってないっ。 

 瀧澤さんは普段なかなかお目にかかることができないレベルのイケメン御曹司様だから、いきなりキスされて動転はして反論もできずに帰ってきてしまったけど。

 ここは、一つはっきり言うべきなのかもしれない。


「あのですね。瀧澤さん、まず彼氏をトレードするって話ですが、あれは実乃璃が一時の気紛れではじめたことです。それに、あなたが私を愛したところで実乃璃には、なーにもメリットがないでしょう?

 だって、あなたは実乃璃と結婚するわけだから、私よりも実乃璃を溺愛していればいいんです」


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