溺愛トレード
煙草の煙が漂うおっさんと暇な主婦だらけのうるさい店内で、何かロマンスが誕生したわけでもなく互いが互いを激しく求めたわけでもない。
恋愛の始まりなんて、ほんの些細なきっかけだ。
瀧澤さんみたいな白馬の御曹司様がぱかぱかとやってくることなんて一万分の一以下の確率なんだと思う。
だから、私と徹平も、店員と客としてなんとなく顔見知りになり、なんとなく世間話をするようになり、なんとなく付き合いはじめた。
パチラーを卒業した徹平は、パチンコ雑誌の編集部に就職しサラリーマンになった。
社会人になっても気兼ねなく付き合える徹平は、最高の彼氏。
一緒に暮らそうとか、結婚とか、そんな面倒くらいことも言ってこなければ、他に女を作るようなこともしない。
出世欲のない男だから仕事でイライラすることもないし、休日に(もしくは仕事の取材で)大好きなパチンコ店に入り浸り、その帰りにデートをしていれば、それが徹平にとって最高にハッピーな毎日だ。
私たちは今の状態がベストだ。可もなく不可もなく。まさにぬるま湯。
私たちは、実乃璃が変なことを言い出すから巻き込まれてしまっただけだとこれでもかとアピールする。