溺愛トレード

「乃亜の元彼か……興味はあるな」

「元彼じゃありません! 今彼ですっ」


 瀧澤さんは、ハハハ、と高らかに笑う。


「今彼は、僕だろう」


 親指で自分を指し、イッツミー、とか言っちゃう御曹司様。迷惑人第二号も、なかなか手強い。


 そこに、うちの支店長が入ってきた。

 朝から油売ってると注意されるのかと焦って立ち上がる。


「支店長、おはようございます!」


 支店長(つまりはこのオフィスで一番偉い人)は、普段から嫌みなおば様でネチネチネチと小言をいってくる。


「応接室を無断で使ってすみません。この人、すぐに追い出しますから!」


 支店長は老眼鏡を外すと小声で「出てくのは、あんたよ!」と私にしか聞こえないヒステリックな金切り声をあげた。



「副社長、朝からいらっしゃるなんて聞いてなかったものですから、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。まあ、なんて爽やかな朝なんでしょう。まさか、副社長にお会いできるなんて夢にも思いませんでしたわ」


 甘ったるいバターミルクみたいなねっとりとした声で、支店長は手を合わせた。支店長のお膝元の秘書課のお姉様が、我が社の最高級おもてなし(おしぼりまで出ちゃう)をはじめている。


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