溺愛トレード

 瀧澤さんは上機嫌に支店長とハンドシェイクをかわして、リバティ社のカップに注がれたゴディバのコーヒーを一口飲んだ。

 その一連の動作が、まさに洗練された
大人の男の気品を放っていて目を離しがたい。


 ええいっ、でもそんなこと言ってたら、いつまでもこの人を拒絶できないし、このままでは実乃璃が夜遊びを諦められるまでの間ずっとつきまとわれてしまいそうだ。


「じゃあ、瀧澤さん。こちらの件は、実乃璃から連絡させますので、サヨウナラ」


「乃亜っ!」


 瀧澤さんはリバティのカップを置くと、私を追いかけてきた。

 長い足はあっという間に私に追いつき、私は支店長、秘書課のお姉様、その他瀧澤さんの付き人が見守る中、壁にドンと追い詰められる壁ドン初体験をしてしまう。


 瀧澤さんは毛先まで丁寧にお手入れされていそうな前髪と前髪の間から切ない目で私を見つめてくる。


「まだ話は終わってないよ、乃亜」

 じょ、じょ、じょ、じょ、じょ、じょ、じょ、冗談じゃないっ!!!
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