溺愛トレード
「アドバイスはないのか。よし、じゃあランチにしよう」
過去の思い出で感傷に浸っていた私は、瀧澤さんに強引に引き寄せられて現実世界にカムバックした。
「ランチって! まだ十時ですよ?」
「うん。でも今から函館に飛ぶから、到着する頃にはちょうどいい時間になっているよ。乃亜はシーフードが好きと聞いていたけど、間違いないかな?」
そりゃ、シーフードというか魚介類が大好物ですよ。
でも、函館って? 飛ぶって?
「さあ、行こう。今日は大忙しだ。飛行機に乗り遅れたら大変だからね」
「い……嫌です」
「遠慮はしないくていいよ。そんなとこも、乃亜の可愛いところなのかもしれないけどね」
「遠慮じゃなくて、本気で嫌ぁああああ!」
「あはは! 何の真似だい? ホラー映画か何かかなぁ」
私の必死の叫びも虚しく、しかも、総大理石の床は滑りが良すぎて私はあえなく連れ去られる羽目になった。