溺愛トレード


 拝啓 徹平様。

 今日は昨夜のことについて色々と話し合う時間が必要だと思っていましたが、訳あって仕事が長引きそうです。徹平の部屋にはいけなくなりそうです。理由は後日、詳細に説明いたしますが、明日以降私からの連絡が途絶えた場合、即捜索願を出してください。

 夕食は野菜もきちんと食べてくださいね。かしこ。乃亜より。




 メール文章を確認して送信ボタンを押したのは函館の上空。メール送信と一緒にため息も吐き出した。

「ほら、乃亜。見てごらん!」

 セスナ機の小窓から、外の景色を眺めた。モデルのウエストみたいにキュッと引き締まった夜景。

 夜景を見ると言い出すから、ロープウェイにでも乗るのかと思ったら、セスナ機をチャーターしちゃった瀧澤さん。(といいますか、所有物なのかな?)

 函館の高級レストランで食べたシーフード料理が喉元まで詰まっている私には、あまり有り難くはない。

『大袈裟だな、仕事頑張れよ。昨日の話はまたゆっくりしよう。徹平』という返信メールを受け取り、瀧澤さんに気がつかれないように携帯をバックに隠す。


 なんで彼氏とのメールのやりとりを、こそこそと行わなきゃならないんだろう?


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