溺愛トレード
一つのちっちゃな窓から夜景を眺めているから自然と瀧澤さんとの距離が縮まる。
「綺麗だなぁ…………乃亜は、人工的な光と、自然の光。どっちが好き?」
瀧澤さんは子どもみたいに純粋そうな顔をした。
「どっちでしょう、瀧澤さんは?」
「僕は両方だな。ほら、今日は星も綺麗だ。両方とも甲乙つけがたいから、両方楽しめるのが一番だ」
その顔は、悪戯を思いついてわくわくしている子どもみたいだ。
計算も打算もない。
「私は、ネオン街みたいにチカチカしている人工的な光は苦手です。キャンドルの炎とかは好き」
「キャンドルか、ロマンチックだね」
感心したようなため息が耳元の髪を揺らした。
「…………あ、あの……」
夜景が楽しめるようにとセスナの中の照明は消えている。
同じ場所をゆっくりと円を描くように飛んでいたセスナは進路を南へと変えた。
「そろそろ帰ろうか? 初めての出向で、君も緊張しただろうから」
いや、仕事は全然してないし瀧澤さんが優しいから緊張なんてしてませんけどっ。
だけど、暗いセスナ機の中で瀧澤さんの手が私の手を握りしめるから、私はいつまたキスをされてしまうんだろうと思うとドキドキが止まらない。
これが毎日続くのかと考えると、背筋がぞっとした。