溺愛トレード

────日帰りで函館なんて、金持ちの考えてることはよくわからないけど。

 予想外に早く東京に帰ってこれた(セスナ機が速かった)。

「自宅まで送るよ。ここからは自家用ヘリで」とおっしゃる御曹司様のありがた迷惑な申し出を断り、私は地下鉄で徹平の部屋へ向かうことにした。


 さっきはメールで、行けない、と伝えてしまっていたけど、今は無性に徹平に会いたい。

 会って、頭の隅から隅まで瀧澤さんに染まってしまった色を塗り替えてもらいたい。


 あの人は、彼氏なんかじゃないのに、ついうっかり函館で半日デートをしてしまったがために、もう頭の中が瀧澤さん色に占領されている。


 アパートの二階を見上げると、電気がついていた。


 よかった、徹平帰ってきてる。


 コンクリの階段を上がって、呼び鈴は鳴らさずに合い鍵を差し込む。

 いつもドアを開けるのが面倒くさいから、勝手に入ってきて、と徹平に言われてるから。


 リビングでは、テレビがついていて、その目の前に置かれている座椅子に徹平の頭が見えた。


「徹平、はやく帰ってこれたから来ちゃった」



 だけど、その頭と重なり合うように、どこかで見たことある柔らかそうな巻き髪が…………



「み、実乃璃っ!?」



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